京都地方裁判所 昭和42年(ワ)568号 判決
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〔判決理由〕被告主張の免責の抗弁について判断する。
(一) 前記当事者間に争いのない事実、<証拠略>を総合すると次のことが認められ、<反証排斥略>
(1) 原告は、事故当時平安高等学校の三年生であつたが、事故の日朝から、友人と、六台の単車に乗つて鈴鹿サーキットに行き、そこで、運転練習をし、京都に向けての帰路、本件事故現場にさしかかつた。
(2) 原告らの六台の単車のうち、四台は、本件事故現場附近で、本件事故車を、時速八〇キロメートルもの高速で、引き続いて、順次、右側から一台、左側から一台と交互に追い越して行つた。
(3) 被告は、この無謀な単車の操縦に危険を感じ、少しスピードを落し、時速約四〇キロメートルで、道路センター寄りの自車線上を西進した。なお、道路上のセンターラインは消えていた。
この四台目の単車が追い越すとすぐ、訴外藤山隆夫の運転する五台目の単車()が、本件事故車の右側から追越しをかけてセンターラインを越えたところ、対向車線上を、大型トラック()がセンター寄りに東進してきた。そのため、本件事故車(①)と大型トラックの間にこの単車がはさまる恰好になつた。その位置関係は、添付図面<略>のとおりである。
被告は、このままでは藤山の単車がトラックと衝突すると判断し、直ちに、ハンドルを左に切つて進路をやや左にとつた。対向の大型トラックも、同様ハンドルを左に切つて逃げたので、単車との衝突事故は免れた。
(4) 原告は、一番後尾から単車を運転して追従していたが、本件事故車の六、七メートルないし一〇メートル後方を同一方向に西進中の訴外佐々木視治の運転する乗用車の右側を追い越し、本件事故車との間に斜に割つて入つてすぐ、本件事故車の左側からジグザグに追い抜こうとし、本件事故車の左側に併進しはじめた。
このとき、本件事故車が、前述のとおり左に寄つてきた。しかし、原告は、藤山の単車がどのような危険にさらされていたか、本件事故車が左に寄つてきたわけを知る由もなかつた。
原告は、本件事故車が左に寄つてきたので、自分も左に寄つたとき高速のため路肩の非舗装の砂利道でスリップし、そのまま約四メートル先の由良谷橋のコンクリート製欄干に単車を激突させた。原告は、急制動などなんらの措置をとらなかつた。
原告は、このはずみで飛ばされ、本件事故車の左側のサイドミラーに前から当つて本件事故車の車の下に落下した()。この落下前に本件事故車は急停車したが、その位置は③である。
(5) 原告は、高速で本件事故車の左側に出てきたので、被告は、藤山の単車の衝突事故をさけるため左にハンドルを切つたとき、原告の単車との事故を回避する余裕がなかつた。
(二) 以上認定の事実からすると、本件事故の原因は、国道一号線上を進行している車を順次ジグザグに左右から高速で追い越していく原告の無暴運転にあるとしなければならない。すなわち、藤山が本件事故車を右側から追い越し、その追い越しが終つていないのに、原告は、法規に違反して左側から追越しをかけ、しかも高速で左側をすり抜けようとしたのであるから、これは、全く無謀な運転でしかない。従つて、この無謀運転に伴なう危険は、原告に引き受けさせるのが当然であり、被告には、このような無謀運転をしてくる単車のあることを予想して左後方をも右後方と同程度にしかも同時に注視し、左側を無謀運転してくる単車に備えて危険回避の措置をとる注意義務はないと解するのが相当である。まして、本件では、被告は、藤山の単車の衝突事故を回避するためハンドルを左に切つたのであり、このハンドル操作は、この事態に対処する措置として適当なものであり、もし、そうしておらなかつたときには、本件事故が発生していない代りに、藤山が事故にあう可能性があつたのである。このような場合、藤山の単車の事故をさけるとともに、原告の単車の事故をも同時に回避すべき運転操作を被告に強いることは、被告に対し、不可能を強いることになるばかりか、原告は、自己の無謀運転の責任を、被告に転稼することになり妥当性を欠く。
(古崎慶長)